歯科技工の市場規模について
コラム>歯科技工所の経営
2021/01/09

<歯科技工界の動向・市場規模の現状について>
日本はいま高齢化の問題を抱えています。
歯科業界も今後益々、その影響を受けることは間違いないでしょう。
長年使われてきた歯はどうしても年齢を重ねるとトラブルを起こしやすく、
糖尿病などの全身疾患からも口腔内の状況に大きな影響を与えます。
そうなれば、歯医者への受診者は自然と増加し、
被せ物や入れ歯などの技工物の作製も以前にもまして増えていくことでしょう。
現在の技工所の動向・市場規模の状況についてお話していきます。
<現在の歯科技工界の動向>
いま、技工所は増加の傾向にあります。その増加の仕方には、大きな特徴があるのです。
・歯科技工所は全国に約20000軒以上
歯科技工所は年々増加の傾向にあり、その数は約20000軒以上です。
2019年時点での公立小学校の数は19432校ですので、それよりも多いということになります。
そのなかでも、増加の傾向にあるのはじつは就業者がひとりである技工所。
その背景には、過酷な労働状況や、収入の少なさが一つの要因となっていることもあるようです。
今後益々高齢化が進み、歯科業界のニーズはより高まるなかで、
被せ物や入れ歯などの技工物を作る機会は格段に増え、技工所への受注がどんどん多くなるはずです。
それと合わせて、健康意識の高まりから審美性の需要も高まり、技工所には多大な期待が寄せられます。
・小規模分散型のビジネスモデル
では、そんな就業者がひとりの個人経営の技工所は全体の技工所の
どのぐらいの割合を占めるのでしょうか。
その割合は、なんと全体の技工所の大半を占めているのです。
平成28年時点で、3、4、5人以上の技工所は1000軒前後のなか、
2人は約2000軒、そして1人は群を抜いて多く16000軒となります。
これは全国に分布する技工所がほぼ個人経営ということであり、
小規模分散型のビジネスモデルでもあるといえます。
・世界に誇る匠の技でより専門性を重視すべき
そんな一人での個人経営をする場合には、もちろんリスクも伴います。
技工をする上で必要な道具や、機械を揃えなければそもそも技工所ははじめられません。
それには相当な準備費用がかかるのです。
個人経営をするには技術のみならず、自分で自分を売り込める能力も必要。
高い準備金をかけても依頼がなければもちろん廃業へと一歩ずつ進むだけなのです。
そんな世界で生き延びていくには、やはり誇れる技術力がなによりも大事です。
技工所で働き出してはじめてその過酷さに気付き、
辞める人が多いのも事実ですがそのなかで身を削りながらもひたすら努力を続け、
プロフェッショナルの意識を高く持ち、専門性を高めて活躍している方も多くいらっしゃいます。
将来独立したときにも、技工所で働いているときにも、
必要とされ大事な仕事を任されるのはやはりそういう人材。
大変な仕事のなかでも常に自身の技術力を磨き、前向きに進んでいける人こそが、
歯科技工士業界を今後も引っ張っていってくれるのではないでしょうか。
<歯科技工の市場規模は?>
歯科技工の市場規模は横ばい状態ではありますが、分野によっては大きな増加の傾向もあります。
・市場規模の現状
2019年度の国内歯科機器・材料市場規模は2683億55百万円と推計されています。
特に予防歯科関連商品や歯科材料市場は増加の傾向が強くなっています。
出典:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2509
予防歯科製品に関しては、予防の意識の高まりや、
高齢化による医療介護での口腔ケア用品の需要も関係しています。
歯科材料の増加は、審美性の高まりからCAD/CAM冠などの導入も増えたことにより着実に増えているのです。
<高齢者・審美性の需要の増加>
部分的に保険算定可能なCAD/CAM冠。
保険でも白い歯が入れられるとあり、人気の高い技工物でもあります。
設備投資には費用がかかりますが、デジタルで作製できるため技工所にとっても効率化が図れます。
これらが保険適応されるようになって以来、技工物の作製が増加し続ける背景には
やはり審美性や健康、高齢化が進んでいることが大きな理由の一つであるといえます。
<増加する歯科技工市場が地域に密着する必要性>
2019年時点で、35000人ほどの歯科技工士が活躍しています。
歯科技工所として、上手く生き延びていくにやはりご自身の技工所周辺の
歯医者さんとの繋がりを大切にする必要性があります。
信頼されていなければ、受注はもちろん、患者様の自己負担が大きい
自費の技工物の受注をしてもらえることはまずないでしょう。
ですので技術はもちろん、しっかり地域に密着した歯科技工所になる必要性があるのです。
<まとめ>
年々就業者がひとりである技工所が増えるなかで、歯科技工士の数は減少しています。
技工士の数が少なくなるということは、それだけ一人に対する受注が増えて
仕事に困らないと思うかもしれませんが、じつはそうではなく、
増加の傾向にある技工物を一人ひとりが負担する量が増えたということでもあるのです。
数は増えても受注を受ける技工物が保険適用のものばかりだと、
数をこなすことでしか生き延びるすべはなく、体も心もすり減らし、廃業へと繋がる可能性もあります。
それを回避するべく、地域に根差し、匠の技で信頼される歯科技工士であることが
重要といえます。ですが、需要が増えているなか、歯科技工士は減るという現状。
歯科業界を支える歯科技工士の存在の認知、
そして業務体制や負担などのケアが一層必要となってきているのではないかと強く感じます。
記事提供:higashi
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